博士

http://www.asahi.com/edu/university/zennyu/TKY200705220121.html

文科省の三浦和幸・大学振興課長補佐は「米国では博士が企業や起業などで活躍しているのに、日本は研究者志向が強い。大学院も研究者にしかなれないような教育をしてきた」。

 日本経団連は3月、理工系博士の育成と活用について提言をまとめた。ポイントは図の通り。椋田哲史・産業第二本部長は「博士課程は今も大学の研究室に残ることが前提で、博士が企業ですぐ成果を発揮できるとはいえない」と言う。

まあわかるようなわからんような.
博士学位をとる条件として,「研究論文が書けること」というのがあるわけですから,「大学院も研究者にしかなれないような教育をしてきた」というのは何を言っているのだか,と言う感じですね.
それとも「博士」の学位は講義さえちゃんちゃんと出て試験にパスできれば得られるものと思っておられるのでしょうか.そんなの修士にもなれない.

問題は研究者に「企業や起業などで活躍」する土壌が日本にはないということでしょう.あまり特殊な例を挙げるのもなんですが,Google,Yahoo等ではバリバリの「研究者」が活躍しています.DBLPなんかを見ても彼ら/彼女らはいまだにバリバリの研究者です.

すると,土壌もないのに博士持ちをバンバン増やした文科省は何を考えていたのか,ということになる.もしくは土壌育成込みでの政策であるべきだったのに,そっちの方は「まあ博士が増えたら彼らがどんどん開拓して行ってくれて土壌なんか勝手に育成されますよ」くらいにしか考えていなかったのが見て取れる.

一方、大学関係者は安易に国の政策に乗ったことを反省する。戸塚洋二・東大特別栄誉教授は「指導教員は、学生の就職先にまで責任を持てないなら入れるべきではなかった」。高部英明・大阪大教授も「ほとんどの大学人は今の事態をうすうす承知しながら、表だって反対してこなかった」。

生成した博士をどうするかの議論がなされてない,というのに大学関係者は気づいていた,と.

つまり,そこら辺の意識のギャップこそが問題…というか,そんなことを文科省の大学振興課長補佐が言っていることで,なんだか暗澹たる気分になるわけですが.ま,平たく言うとどう考えても文科省が下手を打ったとしか思えない.

関連した朝日新聞の記事↓
http://www.asahi.com/life/update/0526/TKY200705260053.html

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これに対して「そんな問題,10年前から言われてたじゃないか」「いまさら何を」と思っておられる方が多いようですが,この問題は(学位持ちを増やそうと言う意味での)「大学院重点化」という『政策の失敗』でその政策の失敗が顕著になってきた,と言う意味でやはり今考えるべき話なのです.

10年20年前からあったOD問題ですが,今回はそれをいっそう促進する政策を国がわざわざとってしまい,その結果が顕著となったことが問題なのです.