優秀な研究者

五号館のつぶやきの「優秀なポスドクの存在と研究後継者不在という矛盾した現実」という記事のコメント欄から (…わかりづらい…)

Commented by A at 2007-11-04 14:16 x
日本における人材の枯渇や、研究の大きなブレイクスルーがほとんどない理由は、人材の使い方(育て方)にあると思います。例えば、次のうち、誰を採用すれば良いか分かりますか?

1)Nature、Scienceなどに複数本論文を出していて、大御所ラボの出身、推薦状も立派。受け答えは平均以上。
2)無給の研究員を経て今に至るが、学位を取ってから5年、未だに論文なし。
3)それなりに優秀、しかし上司に聞くと何かにつけて意見するし、自分のやり方でしか研究しないと言う。
4)能力はあるかも知れないが、病弱で休みがち。
5)じゃんけんに負けて意図しない研究室に配属。運良くそこで助手になる。院生と一緒に海のものとも山のものともつかない研究を続けている。
6)実験をやるのは良いが、平行していくつものことをやろうとし、時に操作を間違える。

Commented by A at 2007-11-04 16:09 x
こたえ

1)はいわゆる今時の「優秀な」人材ですね。

2)は湯川秀樹。教授に怒鳴られて論文を出したら賞賛の嵐(28歳)。1949年ノーベル賞

3)は利根川進。研究所を追い出されるが次の場所で大成功(30代)。1987年ノーベル賞

4)は朝永振一郎。研究所の人たちとハイキングなどに出かけるうちに身体も丈夫になり、留学後繰り込み理論を完成(40代)。1965年ノーベル賞

5)は白川英樹。たまたまセミナーに来ていたマクディミアット教授に出会い留学し、導電プラスチックを完成させる(40代後半)。2000年ノーベル賞

6)は田中耕一。とりあえず間違えたサンプルで実験したら大成功(20代後半)。2002年ノーベル賞

特殊例で議論をするのは危険と思いつつも,この次に続く

Commented by A at 2007-11-04 16:10 x
結局、人材なんてどこでどう花開くかなんて誰にも分からないと思います。特に、求められる具体的な結果など存在しない、科学の源流、ブレイクスルーを求める基礎研究においてはなおさらでしょう。実際彼らはそれまでにNatureやScienceに論文を出してるわけでもありませんし、誰もこれから彼らがノーベル賞級の研究を行うなどとは予見できなかったでしょう。
 今の人事は目に見えるものを重視して、若い人を競わせ、その中からもっともらしい人を選んで他を切り捨てているけれども、実のところ、誰が成功するかなんてわからないと思います。大切なことは上にもあるように、自分の好きなこと、信じることに挑むことを止めなかったから成功した、それだけのことです。もし本気で日本の基礎科学のレベルを高めようと思うなら、今のポスドクレベルの人間は皆独立させて好きな研究をやれるチャンスを与えた方が良いですね。人数を増やして多様性を確保することが科学上のブレイクスルーに到達するための近道だと思います(若い人には決して、金余りPIのお手伝いなんかさせてはいけないでしょう)。

Commented by A at 2007-11-04 16:35 x
蛇足ですが、若い彼らがノーベル賞を受賞できたのは、その成果が彼らのものであると認められたからだということがあるでしょう。今の若手の論文のほぼ99%は、上司が責任著者(つまり研究成果の受益者)になっています。そもそも研究テーマ自体、上司の指示したもの以外許されるような環境に無いでしょう。この受け身の環境に若い時間を費やし、50歳近くになってようやく教授になったとして、さぁ、新しい研究に挑戦しよう、と思えるのでしょうか(無理だと思います)。

いま巨額の研究費をもらっている大御所のほとんどは、外国の後追い研究でNatureやScienceに論文を出して大きな顔をしていますが、はっきり言って2流でしょう。ここにどんなに金や若い人材をつぎ込んでも、最初の源流を発見しなければ何をやっても1流にはなれないのですから。
 こういう源流を発見するには、科学が好きで、挑戦する以外に他にないと思います。必要なのは、そういうやる気のある人にチャンスを与えて育てることだと思います。大学院の社会的役割とは、詰まる所、研究のやり方を教え、場を提供するということではないでしょうか。

まで読むと,なかなか考えさせられる…
と同時に,情報に加速がつきすぎてしまっている現代とは時代が違うとも思うわけですが.